
勇気がわく 魔法の言葉。
その言葉を聞き 思うたび
思い出すことがある
あれは 修業先で
スタイリストのようなものになって
しばらくした時の夜の事・・
「ケン!今夜空けとけ!」
僕は当時 修業中。
空けとけって言ったのはオーナーであり師匠の
熊沢(以下マスター)。
その言葉を聞いて僕は
「・・・・ついに来た・・・」
そう思った。
当時 僕はなんとな~く
お客さんのカットに入り始めていた
確立したカリキュラムっぽいモノはあったのせよ
僕の修行先は なんとな~くカットに入るような店で
厳密に手取り足取り教えるような店ではなく
見様見真似で刈り上げも覚えたって言っても
過言ではない・・
そんな僕が切れるお客さんは
超常連のおじいちゃんからスタートする。
僕の働いていた店は現オーナー・熊沢で
3代続く店だった。
だから僕が入るお客さんは
筋金入りの3代跨ぎの常連さん。
つまり歴代 熊沢でカッターになるには
そのおじいさんたちの髪を切り
成長していく いわばありがたい
お金をいただける練習台。
で
僕もカットに入る。
すると
徐々に異変が起きる・・・
その筋金入りの練習台をかってでてくださっていた
おじいさんたちが来なくなる・・・
どんどん来なくなる・・
本当に失客の嵐を巻き起こし始めた・・・
やればやるだけ来なくなる
今思えばどんだけだよ!
って変な汗でるけど
とにかく失客は止まらない・・
さすがのクソ生意気なケンちゃんも
焦り 落ち込む・・
そんな夜
「ケン!今夜空けとけ!」
そう来た・・・
「・・・ついに来たか・・・」
怒られるんだろうな・・
カットから外されるんだろうな・・
どうなるんだろう明日から・・
そんな思いで一日の営業が終わり
「ケン!いくぞ!」
僕はマスターの車に乗せられ
とあるスナックへ連れて行かれた。
カウンターに座らされ
マスターも隣に座るかと思いきや
突然 ボックス席の団体客の中に
飛び込んでく。
僕は「??」
マスターは大騒ぎを始め どんちゃん騒ぎし始めた
そのとなりの席 その隣の席
すべての店を巻き込んで大盛り上がり。
マスターはオカマのマネが十八番で
その時もオカマになりきって
その席の男の人の耳を舐めたりして
店中巻き込んでの大騒ぎ。
僕はカウンターで蚊帳の外・・
「なんだよ 怒るんなら早く怒れよ・・
恥ずかしいな・・まったく・・」
そんな風に思っていた。
僕はカウンターのママに
「いつもあぁなんですか?
うるさくてスミマセン・・」
そう聞いたら
「え?お客さんたち初めてですよね?」
僕は「???」
すると マスターがスッと僕の横に座り
「いいか、ケン
お前が逃がした客なんて
俺がいくらでも
こうして取ってきてやる。
だからビビんな!
思いっきりやれ!」
そう 耳元で呟くと
また嬌声の輪の中に戻っていった・・・
僕は泣いた。
書いてる今もこの話 この日の夜思い出すと
泣ける。
とにかく 泣いて泣いて・・・
怒鳴られるより
殴られるより
これは刺さった
こんな話 もう30年以上前の事なのに
今も泣ける。
その日の店での記憶はそこから無いけど
酔いつぶれたマスターを抱えながら
マスターの家は店の3階だったんで
抱えて階段上りながら
マスターは笑いながら
「今日の事みんなに内緒な!内緒な!」
そればっかり繰り返してた
まぁお客さんの女の人と
✖✖してたし(笑)
そして その何日か後・・
本当にあの夜 あの店のお客さんが
3人も来てくれ
マスターはカットの覚束ない僕に
「ケン いけ!」
って僕に切らせた。
あのお客さん リピートしたっけ・・?
忘れちゃったな~💦
僕は マスターの店でなければ
今の僕ではなかったし
この仕事辞めていたと思う。
あの人でなければ
マスターでなければ僕の今の人生は
無かったと思う。
あの時・・・
経営者の判断として
僕を降格させたり
お客さんに入れるのを考えたりするのも
当然あったと思う。
でも
マスターは思えばいつも
「とりあえずやれ!
やってから考えろ!
とにかく引くな!
前に出ろ!
引いた奴には次はないんだ!
次が欲しけりゃ出来なくても
出来るって顔していけ!」
そう言っていた。
その「次が欲しけりゃ」の奇跡・・・
昨日そして今日・・
2025年の今現在
本当に偶然 本当に奇跡のように
僕が修行していた熊沢のお客さんが
僕のyoutubeを見て
僕が熊沢の弟子なんて知らずに
orbに来ていただけた
もうビックリ!!
思い出話に花咲いて
とにかく「俺は熊沢の『息子』」って
改めて思え嬉しかった
熊沢は「思いっきりいけ」なんて
カッコイイこと言いながら
熊沢はド下手くそで(笑)
その尻拭いをいつもさせられてて
僕のコテパーマやあまのじゃく式は
熊沢のテキトーなカットを
なんとかまとめるために生まれた技法なんです
マジです!
もう熊沢は死んじゃったけど
最後に会った時
「ケン 手をかせ」
って言ってベットから起き上がる時
えぇカッコしいの ダンディーな熊沢が
絶対しないことしてね
俺の手を握り起き上がったあのことは
忘れられない・・
「いいかケン
お前はいっつもカッコつけて
偉そうで こざかしい
そこを越えて『馬鹿になれ』
そうすりゃお前はひとかどの人間になれる
いいか馬鹿になれ お前は馬鹿になれ」
最後の最後までそう言ってくれてた
あの当時の僕を知るゲストと今日
「あの頃の俺は ホント
ツンケンして お客さんに
平気で喧嘩売って
先輩にも常に喧嘩売って
誰も寄せ付けない
笑わない 頭下げない
ある意味どうしょうもなかったよね
でも やっとすこし熊沢の遺訓みたいなのの
意味が いろんな人のおかげで
理解出来てきた気がします
死んだとき あちらの世界で熊沢をさがして
『俺、馬鹿になれた?』
そう聞く日を俺楽しみにしてるんです」
熊沢が死んで来月で15年
まさかこんな奇跡が
こんな熊沢との絆が
あの人にかけてもらった
無償の愛
その大きさに改めて
言葉失う
あっちなみに
昨日のゲストは
髪を短くして「どんぐり」みたいになったのが
トラウマ的で 今も怖いって
その「どんぐり頭」にしたのは
熊沢
です( ´艸`)
マジ下手だったのよ(笑)
さて・・・
マスター
相変わらず俺はアンタの尻拭いしてるぜ
それが嬉しいよ!
あなたの「息子」で幸せです
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